第1話「ミチ+ジュクチ=キンキ」
※規約に関しましては、「にぼしの声劇台本」利用規約ページをお読みください。台本の最後に添付してあります。
⚠️この作品には「カニバリズム」のイメージが含まれています。グロい演出がありますので、充分に注意した上で演じてください。
《キャラ》
立華アスタ
男。17歳。高校二年生。帰宅部の青年。
帰り道に不審者に拉致される。
五条カルテ
男。24歳。フリーのカメラマン。
モデルのアサミとは縁が深い。
富永・エトワール・澄子
女。21歳。厨二拗らせ絵師さん。
フランスと日本のハーフ。
羅刹(らせつ)
男。28歳。コスプレイヤー。
澄子とはコミケで知り合った。
立華アスタ:
五条カルテ:
富永・エトワール・澄子:
羅刹:
※この話では、《》や『』など、カッコの多用があります。カッコ付けされた言葉は、これからこの言葉がどのような意味を持つのかを考えながら演じてください。また、途中、××といった伏字演出があります。この場合、伏字は読まずに飛ばして演じてください。
アスタM:夢を見ていたのか。今まで見ていたものは幻覚だったのか。彼女が警告してくれなかったら、今頃俺は…幻覚の海に溺れてしまっていたかもしれない。…襲いかかる吐き気。アレを平気で××だと思って食べていたのかと考えただけで。…これは、あの時から数時間後に起こる事だ。
アスタ:あーあ、やりたいこともないし。帰って宿題でもやるかな。
アスタM:…本当にその通りだ。やることがないし、高校の部活にも俺の興味をそそるものはない。せめてもの趣味はスプラッター映画の鑑賞だった。カニバリズムという題材には特にそそられるものがある。…だって、食べられないものの味なんて、興味が出てくるじゃないか。たまに、家族を見ながら放心状態になっていることがあるようで、家族から不気味がられていたっけな…。
アスタ:んっと、母さんから買い出し頼まれてるんだった。はー、めんどくせえ。
アスタM:ああ、こんな平和でつまらない世界、変わってしまえばいいのに。刺激のない世界で生きてたって…意味ないだろう。…はぁ。
(買い出しを済ませ、スーパーから出るアスタ。)
アスタ:卵に牛乳…それからりんごね。よし、買い忘れなしっと!さぁて家に帰りますか。
(アスタ、口をハンカチーフでおおわれる。)
アスタ:…んっ!ふぐっ…!んんーっ!!
アスタM:なんだよコレッ…!ホラーモノによくある気絶のされ方じゃねぇかっ!…あ、力が出ない…これが…クロロホルムって奴か…。
アスタM:俺は、目が覚める。ある男がこちらを見ている。水色のわしゃわしゃした髪型が視線を凍らせる。しばらくすると、その男は声をかけてくる。
カルテ:うーい?大丈夫?…新たな同居人さんだね〜。元気なさそうだし、お腹すいてるでしょ?
アスタM:そーいや、今何時なんだろう?残っている力で腕時計を見る。時刻は午後8時だった。俺は首を縦に振った。もう限界なのかもしれない。すると、五条カルテと名乗る男はあるものを持ってきてくれた。
カルテ:これ、飲んでよ。これから他の奴らと豪華な食事するんだけど、これから先アンタが耐えれるとは限らない。これ飲んどけば、体も心も楽になるし…この世界でアンタがやっていけるような状態になると思うよ?ほら、口開けて。
アスタM:途中彼が何を言っているのかわからなかったが、俺には答える気力がなかった。それを飲めば、体や心が楽になるのか?それなら好都合だ。栄養剤か何かなのか?俺は大きく口を開けた。男はそれを食べさせてくれた。そレを飲み込んだ後、たちまチ元気が湧いてきた。栄養剤でもこんナ簡単に元気が出るモのなのか?俺は立ち上がル。さっきまで答える気力モなかったのに。
アスタ:これ、すごいですね。なんですかこれ。
カルテ:君は知らなくていいものだよ。ただこれ、切れると副作用やばいから切れそうになったら飲み直すといいよ〜。あ、これスペアね。
アスタ:あ、ありがとございます…。
アスタM:俺が知らなくていいもの…?一体どういうことなんだろうか?でも、今すごく気分がいい。幸せだからか、足も弾むな…って痛っ!
カルテ:おいおい…階段前でつまづくなって…。飲んだ直後はアドレナリンがドバドバ出るから、興奮状態になりやすい。こっから先階段だから気をつけてくれよな。
アスタ:あ、はい…分かりました…。
アスタM:でもなんだろうか。立ちくらみも酷いし…あ、カルテさんにぶつかってしまう…。
カルテ:…そんなにふらつくなって。ま、最初はこんなもんか。逆に元気ですぎてクラクラするんだろうな。…目前でフラッシュたかれてる気分になる感じか。…肩貸すぜ。そら、寄りかかって。
アスタM:カルテさんの言う通りだ。目前でフラッシュをたかれている感じが妙に合う。これでは満足に歩くことも出来ないな。…俺はカルテさんに肩を預け、しばらく先の方まで歩き続けた。
カルテ:おーい!みんな、新入りさんのお通りだ!パーティー用のメインディッシュは新入りにくれていいだろ?…よしよし、みんな賛同してくれるな。これから、お前に最高のご飯をごちそうさせてやるよ。…ほら、そこのテーブルを見ろ。
アスタM:そう言われて、俺はテーブルを見る。そこには少し小振りな『手羽先』が置かれていた。腹の音が酷い。身体的にも限界だった俺は、ふらつきながらもテーブルに走り、その『手羽先』を食べる。…俺が食べていた『手羽先』と少し違う味がしたが、そんなの、今は関係ない。昼飯を抜いていたからすごく腹が減っていた。それもあって、満足に『手羽先』を食べることが出来た。何故だが…心臓がバクバク止まらず、涎(よだれ)が止まらない。
カルテ:…堕ちたな。
アスタ:ん?な、なんか言いましたか?
カルテ:ん〜?なんでもないよ〜?そうだ、これから食料調達しに行くんだけど、君も行かない?あ、名前聞いてなかったね?名前は?
アスタ:…立華アスタです。あ、今さらになって気づいたんですけど!ここ、どこなんですか!新入りとか…元気の出る『栄養剤』とか…!!よくよく考えたらわけわかんないことになってるじゃないですか!!
カルテ:…気にすることじゃねぇよ。
アスタ:!?
アスタM:カルテさんから出てくる殺気。かつての優しかったカルテさんが、残像になって消え去っていく。そして睨みつけてくる周囲の視線。俺は恐怖を覚えた。こんなに幸せなのに、どうして、こんなにも寒気を感じるのだろうか。
カルテ:…びっくりさせちゃってごめんな。要は、アンタも選ばれたってこと。それだけ!な!…それじゃ行こうぜ!ほらほらほら!
アスタM:俺は、それ以上の話を聞き出すことが出来なかった。いや、させてくれないのだ。先程の冷たい周囲の視線。もう見たくもないんだ…!
(アスタ、カルテとともに『動物市場』へ向かう。)
カルテ:ほら、ここには食料がいっぱいだろ?威勢のいい鶏からまるまる太った豚まで、色んな家畜が置いてあるんだよ。んで、ここではお金じゃなく、この『栄養剤』を使うんだ。売り手もコレがないと商売がやっていけない。だから、交渉は大事になってくる。俺の様子を見ておけよな。
カルテ:すんませーん!この鶏、『ハッピー』5個で買い取りたいんですけどー!…へ?7個?それじゃ俺がイカれちまいますよ!そっちも本気なの知ってるんで、俺とことん話し合いますよ?
アスタM:やり慣れてるのか、素早いやり取りが繰り広げられる。家畜飼うとか、牧場主かよ…。それに、あの『栄養剤』のこと、『ハッピー』とか言ってたぞ?いったいどういうことなんだろうか?と、思っているあいだにカルテさんが戻る。
(カルテ、交渉に成功し、鶏を持ってくる。)
カルテ:よぉし、今日は売れる日だからって、『栄養剤』3個でもらっちゃった!へへっ!
アスタ:ずいぶん勝ち誇ってますね…。そういえば、『ハッピー』ってこの『栄養剤』の名前なんですか?
カルテ:そうだよ?いい名前でしょ?飲んだだけで『ハッピー』になれるから『ハッピー』。
アスタ:…んー、なんか、学校で習ったような気がする…。「『××』には隠語がよく使われます、きをつけるように。どんなに自分にいい効果があると言われても『××』を使わないように。」って…ああ!思い出せない!『××』ってなんだよ!!
カルテ:どうした?頭痛いか?…ま、いいか。今日はもう帰るぞ。残りは他のやつに任せる。『栄養剤』の効果は最初はキツいからな…今日はゆっくり休め。ほら行くぞ〜、アスタちゃーん。
アスタ:…はぁ、はい。
アスタM:帰り道、俺は足どりが遅かったため、完全にカルテさんと離れ離れになった。携帯電話もいつの間にか無くなっていたため、連絡もとれない。そもそもカルテさんの電話番号を知らない。途方に暮れてた俺は突然、金髪碧眼(きんぱつへきがん)の女性に声をかけられる。
澄子:あなた!なんで、…《子供の腕》を食べたんですか!しかも、あんな無残な《人間市場》を目前にして、なぜ平気でいられたんですか!
アスタ:待ってくれ。…へ?《子供の腕》?俺が食べたのは『手羽先』だけなんだが?それに、アソコだって『鶏』や『豚』がいるだけの『動物市場』だぞ?そもそも、食べる前には『栄養剤』を飲む必要があるってカルテさんが…。
澄子:…やっぱり、この人も『栄養剤』の話をしています!アレは…《××》なんですよ!!
羅刹:…ダメだ。アイツにはもう、《××》なんて言葉は聞こえない。しばらく待とう。着いてこい、坊主。どうせ道に迷ったんだろ。カルテ、とかいうクズ野郎のところにはもう帰れない。
アスタ:カルテさんはクズ野郎じゃない!カルテさんは…カルテさんは、何なんだ?
羅刹:情緒不安定、か…《××》が切れかけてきたんだろうな。その時にゆっくり説明してやろう。澄子、とりあえずコイツは俺が肩を持つ。お前は、拠点に戻っててくれないか。
澄子:はい!分かりました!…彼を、完全に救出しますよ!!
澄子M:なぜ、こんな状況になったかというと、少し前に遡ることになるんですが…!!
澄子M:私…富永・エトワール・澄子は、恐怖に打ち震えていました。私たちは「《××》を使って目前の幸福に溺れる、人間として生きることを諦めた人々」、『リザイン』の1アジトに潜入に来ていたのです。羅刹さんは、私だけじゃ不安だろうって言って、ついてきてくれたんです。…すごく見た目が整ってて、コスプレ姿のままでこの《混沌とした世界》に降り立ったとのこと。
(ここから先、羅刹と澄子の会話は小声で。)
羅刹:…おい、澄子。新入りらしいやつが入ってきた。アイツを狙いで尾行してみよう。…ひょっとしたら、引き戻せるかもしれない。
澄子:はい!分かりました!…って!羅刹さん!あれ、見てくださいよ…テーブルの上に置かれているのって…!!っうっぷ…ううっ…!!
羅刹:澄子、お前はもう見るな。…アレ、《子供の腕》じゃねぇかよ。…まさか、あれを『手羽先』、とかほざくつもりじゃねぇよな…!!!
澄子:…嫌な音がします…!!骨の髄までかじるような嫌な音が…!!
澄子M:私たちが隠れていたのは、食卓に近い倉庫の中。倉庫は勝手口から入ることが出来るため、食卓の様子を近くで見ることが出来るのです。しかし、その食事シーンはとても見れるものではありませんでした。羅刹さんが見届けていましたが、本当に『手羽先』を食べるように《子供の腕》を貪っていたらしいです。『手羽先』のような何かに見せることの出来る『ハッピー』。あれはもう『栄養剤』なんかじゃなくて立派な《××》です。…彼は、必ず私たち《レヴェル》が救ってあげます!どうか待っててください!
澄子M:そのあと、彼らは『動物市場』に繰り出しました。私たちは、彼らが立ち寄った店の壁に張り付き、こっそり彼らの様子を見ました。その道中は、《地獄絵図》でした。泣き叫ぶ子供、絶望に満ちた肥満体型の御方。その全員全てに値札がつけられており、その全てが全裸にさせられていました。カルテという悪人さんは、彼らを『食糧』だと新入りさんに教えていました。許せません!こんな、存在してはならない《人間市場》を許容する『リザイン』は許せません!
羅刹:…しっ!カルテがどこかに行くぞ!後を追う!
澄子:は、はいっ!…ひいっ!
澄子M:子供が必死に泣き叫んで訴える目を見て、私は絶句しましたが、羅刹さんの後をちゃんと追って、彼らの帰路へ辿り着くことが出来ました。
(羅刹と澄子の、小声の会話終了。)
澄子M:こうして、新入りさんの救済に着手することに成功したのです。…新入りさん、《リザイン》の悪いことは『ハッピー』が切れた後で必ずお教えしますからね!
アスタ:…ん?俺は、今…。あ、カルテさんのとこに帰らなきゃ。ええと、お世話になりました!失礼しますね!
羅刹:待て。さっきも言ったろ。俺たちは、お前を返すわけには行かない。《リザイン》のヤツらは狂ってるんだよ。《人間》が《人間》を喰う、とかいう「人間であることを諦めた人間」の集まりなんだからよ。…お前には、そんな『人間』になってほしくない。これから、俺たちがお前を《人間》に戻してやる!…今から、お前は《レヴェル》だ!…まずは食事を元に戻さないとな。…あと、お前が寝ている間に『ハッピー』は回収したからな。澄子、サヤに頼んだ料理を持ってきただろ?
澄子:はい!…野菜たっぷり特製のスープです!
ささっ、お食べ下さい!《××》が切れた後なので、十分に食べれると思います!どうぞ!
アスタ:…いらない。
澄子:…へっ?《××》はきれてるはずですよ?
アスタ:これって、『人間』の食べるモノなんですか!?
羅刹:…はぁ。人間の味を知った愚か者が。そういうことなら飯はやらんぞ。お腹空くぞ。いいのか?…お前は、『人間』になってしまうのか?《人間》であることをやめ、人間を貪ぼる『人間』になってしまうのか?
アスタ:…うぁっ!…違うんです!…すごく美味しそうなんですけど…!体が拒否しているんです…!助けてください…!!…ううっ、ぐはぁ!
アスタM:こんなに助けを求めたのは初めてだ。スリルがある。俺は、こんな世界を求めていたのかもしれない。…とにかく今は、あのスープを抵抗なく食べたい…。『ハッピー』を飲めれるなら、こんなに考える必要なんてなくなるんだろうな…。いや、俺はまだ、《人間》をやめたくない!俺は必死に、スプーンへ手を伸ばす。スプーンを握る手が震える。スプーンの先をスープの中に入れ、スープをすくう。そこから、震えながらも口に運ぶ。口の中が一気に暖かくなる。その時、俺は微睡んでいた眼を大きく開いた。
羅刹:…どうやら、《リザイン》になることはなさそうだな。…そうだ、澄子。アレをやるか。
澄子:はい!そうですね!…でも、その前に、名前、聞いてもいいですか?
アスタ:アスタ、…立華アスタです。
澄子:よし!ちゃんと喋れるようになりましたね!ではこれから、あなたが今までしてきた悪行をお教えしますね!…まず!『手羽先』のことからですが…!!
アスタM:夢を見ていたのか。今まで見ていたものは幻覚だったのか。彼女が警告してくれなかったら、今頃俺は…幻覚の海に溺れてしまっていたかもしれない。…襲いかかる吐き気。《子供の腕》を平気で『手羽先』だと思って食べていたのかと考えただけで。…これは、俺が『リザイン』と《レヴェル》の間を行き来する物語である。
澄子:次回予告ですよ!
羅刹:《レヴェル》として覚醒したアスタ。この物語は、『リザイン』に反逆の牙を向ける《レヴェル》の英雄譚を刻むモノになるであろう!
澄子:次回!『ヒト×ヒト=タイリツ』!
刮目せよ!《レヴェル》の白き翼と共に!